デザインと観察
日本で気づいた、デザインの細部への心配り
洗える病院のサイン、道路標識、ピクトグラム、グラフィックデザイン。日本から戻って調べた事例と、自分の仕事につなげて考えたい問いを紹介します。
日本から戻ったばかりです。旅の中で気になったことを、もう少し掘り下げてみたいと思っています。それは、小さな細部への心配りです。
以前から、デザインや象徴的なものに関心がありました。なぜその形なのか。どう機能するのか。なぜ使い続けたくなるのか。その理由を知るのが好きです。今回の旅から戻って、その好奇心をもう少し先まで追いかけたくなりました。
調べた事例は、洗える病院のサインから、道路標識、空間の案内、グラフィックデザインまでさまざまです。共通して考えたいのは、実用的な問いです。この細部は、使う人のために何をしているのか。自分の仕事にも持ち帰りたい問いです。
届けた後のことまで考える

梅田病院で原研哉が手がけたのは、板や柱を布で覆ったサインです。布は取り外して洗うことができます。隈研吾建築都市設計事務所の紹介では、サインが病院の雰囲気をやわらげることにも触れられています。
今回調べた中でも、特に好きな事例です。デザインをどう手入れしていくかまで考えられています。素材、メッセージ、維持の仕方が、ひとつの考えにつながっています。

小さなサインを見ると、その考えがより伝わってきます。布の縁や折り目、柔らかさが、文字の印象まで変えています。素材の選択が、病院にとってサインを長く手入れしていく方法にもなっています。

チームが新しいコンポーネントやパターンを導入するとき、この事例を思い出します。最初の版は、とてもよく見えるかもしれません。その後には、翻訳したり、内容を更新したり、当初の設計では想定していなかった状況に対応したりする人がいます。
誰が維持し、どのように変更するのかを理解しておきたいと思います。最初の議論に参加していなかった人にも使えるように、パターンには十分な指針が必要です。
これは、マネージャーとしての仕事にも関わります。プロダクトに込めた心配りは、次のリリース、新しく加わるメンバー、次の難しい依頼があっても続いていく必要があります。
街の中にある視覚言語を見つける
日本の道路標識も、もう少し詳しく見てみたくなりました。はっきりした色、矢印、日本語とローマ字の関係が好きです。見るところはたくさんありますが、それぞれのグラフィックには役割があります。

この写真では、大きな矢印が方向を示し、地名や道路番号がより具体的な情報を伝えています。日本語とローマ字は、サイズと配置を変えながら同じ空間を使っています。実用面だけでなく、グラフィックの構成としても興味を引かれます。

一時停止の標識は、また違う種類のメッセージです。形、色、言葉が互いを補っています。他の標識と並ぶと、細かな文字を読む前から、輪郭がどれだけ意味を伝えているかも見えてきます。
インターフェースのレビューでも、役立つ問いになります。最初に理解する必要があるのは何か。それを確かめる手がかりは何か。アイコン、ラベル、色は、同じメッセージを支えることができます。そのうちひとつが欠けても伝わるのか、確かめたいと思います。
見慣れた手がかりで案内する

東京メトロは、路線を表すアルファベット、駅番号、色の付いた円を組み合わせて駅を示しています。案内では青い乗り換えサインと黄色い出口サインを区別し、移動の途中でも関連する情報が現れます。
私が面白いと感じるのは、その繰り返しです。表示の形式や周囲の環境が変わっても、見慣れた手がかりを見つけられます。ひとつひとつのサインが、より大きなシステムにつながっています。
もちろん、大きな駅で迷う難しさがすべてなくなるわけではありません。設置場所や見えやすさも大切です。それでも、共通の言語があることで、よりよい出発点が生まれます。
複雑なソフトウェアにも、同じ必要性を感じます。予算、プロジェクト、承認は、表から詳細パネルへ、さらにメッセージへ移っても、同じものとして認識できる必要があります。途中で名前や意味が変わると、利用者は同じものを見ているのか判断し直さなければなりません。
デザインシステムをレビューするときは、タスクの流れに沿って、そのつながりを追いかけたいと思います。コンポーネントをそろえることは役立ちます。体験全体で意味が明確に保たれることも、同じくらい大切です。
聞かれる前に手順を見せる

もうひとつ見つけたのは、ナインアワーズウーマン神田の壁面グラフィックです。廣村デザイン事務所のポートフォリオには、このサイン計画が掲載されています。写真のアイコンは、チェックイン、ロッカーの利用、シャワー、睡眠という滞在の流れを短く説明しています。
数字、矢印、短いラベルが一緒に働いているところが好きです。ピクトグラムには個性があり、順番を示すことで役割も明確になっています。一方で、どこに何があるかという別の問いには、地図が用意されています。
プロダクトの使い始めを案内する場面にもつながると思います。説明をもうひとつ加える前に、タスクの順番が見えるかを確かめたい。最初に何をするのか。何が必要なのか。次はどこへ進むのか。こうした問いにも、デザインの中で答えたいと思います。
出典:廣村デザイン事務所、ナインアワーズウーマン神田、2017年
個性のための余白をつくる

田中一光が1981年に制作した『日本舞踊』のポスターは、幾何学的な形とはっきりした色で踊り手の姿を表しています。
何度も見返したくなるのは、その形同士の関係です。構成は緻密ですが、イメージには豊かな個性があります。明確な考えがあり、構図がそのための余白をつくっています。
精密さが、何もかも同じ見た目にすることと結び付けられがちなのを考えさせられます。私が関心を持つのは、何かの個性をより認識しやすくする精密さです。
ポスターや広告では、最初に何が目を引くべきか、見た後に何を覚えていてほしいかを考えたいと思います。文字、画像、余白が一緒に働く必要があります。
インターフェースが見る人に求めることは、また違います。表現の余地はありますが、重要な操作はきちんと理解できなければなりません。珍しい見せ方を取り入れることでタスクが分かりにくくなるなら、慎重に考えたいと思います。
私にとっての学びは、どこに個性を持たせるかを選ぶことです。独自の語り口を持ちながら、操作とその結果を明確に伝えるプロダクトはつくれます。
視覚的なアイデアにも役割を持たせる

2015年4月に開業した成田空港第3ターミナルでは、陸上トラックを思わせる床の表示が、大きな案内サインと組み合わせて使われています。PARTYは、この空港体験を日建設計、良品計画との協働として紹介しています。サイン計画はi Designにも掲載されています。
グラフィックの考え方が、空間を移動する行為につながっているところが好きです。トラックそのものが、経路を伝える方法の一部になっています。
デジタルプロダクトで進み具合をどう見せるかにもつながります。視覚的なアイデアは、現在地や次に何があるかを理解する助けになると、より役立ちます。
設定のフローなら、何が完了し、何を確認する必要があり、途中で離れて戻っても大丈夫なのかを伝えることです。ビジュアルデザインにも、その問いに答える役割を持たせたいと思います。
その心配りを日々の仕事に持ち帰る
これらの事例を通じて、細部への心配りをより具体的に考えられるようになりました。ひとつの判断について、それが誰かの理解、行動、維持にどう役立つかを問うことができます。
自分が関わるソフトウェアでは、対象範囲が常に分かる予算表示、使えない操作のそばにある説明、変更点を伝える保存済みビューなどかもしれません。プロダクトやエンジニアリングの仲間と、こうした細部を話し続けたいと思います。
チームにとっては、仕事を丁寧にレビューするための時間と、明確な基準を用意することでもあります。心配りが続くように、一緒に働く仕組みから支えていく必要があります。
日本から戻って、もっと見て、調べて、学び続けたいと思っています。FORMAをつくった理由にも、それがあります。デザインの背景にある考えを知り、他の人と共有するのが好きなのです。自分が関わるプロダクトにも、その好奇心を持ち続けたいと思います。
お読みいただきありがとうございます。
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